では、本とCDの解説をさせてもらいます。
まずはジャケットについて。このデザイン、まるでエレンコです。エレンコとはボサノヴァのヴィジュアル・イメージを決めてしまった60年代のブラジルの音楽レーベルなのですが、僕はここの低予算(2色刷り)でシンプルなジャケット・デザインが大好きです(本の中のエレンコ・ディスク・ガイドでもジャケット写真をたくさん掲載したのですが、残念ながらモノクロです)。イラストは寺坂好市さんに描いてもらいました。本もCDもエレンコへのリスペクトを込めて外側はスカッとM版とスミの2色ですが、中を開くと内側にはホコリっぽいアナログ・レコードが棚に並んでいます。レコードを集めたりしている人はこういう感じ分かってくれるかなと思ってデザインしました。
次にCD。選曲すごくいいです。あえてコマーシャルなボサノヴァははずしてあります。選曲した林くん曰く「室内楽ボサノヴァ」です。渋谷にある林くんのワイン・バーでは毎晩こんなにシックなボサノヴァが流れているのですが、お酒を飲まないところでも充分に雰囲気のあるBGMになると思います。もちろん、ボサノヴァに詳しい人が聴いてもグッときちゃう内容です。僕は6曲目のクアルテート・エン・シーがハモるガロートのメロディーが聞こえてくると仕事が手に付かなくなります。
そして本です。コンセプトは本気じゃないボサノヴァ好きのための教科書です。たぶん一緒に作った林くんはボサノヴァやブラジルについてかなり詳しいはずなのに、普段はあまりマニアックなところを見せてくれません。そんな林くんがときどき僕(ボサノヴァにはそんなに詳しくありません)に話してくれるボサノヴァ豆知識を本にできたらと思って構成していきました。今までは少し専門的な本じゃないと知ることのできなかったボサノヴァ人たちの人間模様や、見ることのできなかった貴重な写真を満載したつもりです(上の写真はデビュー直前のナラ・レオンです。あと、ちょっとデカすぎる魚を釣り上げた写真もさすがブラジルって感じで大好きです)。だから決してマニアックでこむずかしい音楽の本ではないので、気負わずに読んでくれたら嬉しいです。きっと読み終わると今まで聴いていたCDがちょっと違って聞こえたりするんじゃないかと思います。